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気滞とともにお血を除くことが治療の眼目
腎臓ガンはお血型に属するガンですので、気滞と同時にお血を除くことが治療の眼目になります。とは言ってもあくまでも四診に基づいた診断(辨証)に則り、処方を組みますので、このとき気滞やお血のことを配慮するという意味になります。
腎臓ガンで受診した患者は7名です。うち半年以上服薬が可能であった症例3名は全例現在も元気で経過観察中です。3名はいずれもインターフェロンの注射を手術後に受けており、うち一名は効果無しですぐやめております。欧米の専門書によれば、20〜30%の縮小効果が発表されているが、延命効果はないと書かれています。
症例(1) 手術により切断された経絡の機能を補う処方
Sさんは44歳男性。1997年春頃より右下腹部の脹満感がありましたが、触診で異常がないため放置していたところ、秋に健診で右の腎腫瘍を指摘され、某大学病院を受診しました。1997年10月15日に右腎臓摘出(腫瘤の大きさは直径5.5cm)、リンパ節への転移無く、腺ガンの診断でした。ステージはTと考えられます。
手術後インターフェロンの注射を始め3本終了時点の、11月10日紹介され私のところを受診しました。インターフェロンの注射は暫くして中止したそうです。
Sさんの母親が腎臓ガンと乳ガンの既往歴があり、姉も乳ガンで手術するというガン家系の一員です。私のクリニック受診前はビールを飲むなどもしていましたが、その後は飲食に気をつけています。
診察の結果は、腹診で上腹部が堅く圧痛もあり、気の流れの滞りが示唆されましたし、舌質の色は赤みが薄く、身体の芯の冷えが考えられました。また舌苔が厚いことと、肺と胃腸の脈が一見すると強いのに、重按すると弱くなってしまうことから、肺と胃腸の働きが低下し水分の処理能力が衰えているにもかかわらず、処理できる以上に飲む量が多いなど飲食の不摂生が明らかになりました。
腹診の時に気がついたことですが、手術痕は右側腹部を縦断しており、帯脈と呼ばれる経絡を切断していました。帯脈は腎脈との関連が強く、腎臓疾患に対し何らかの悪影響を持つと示唆され、経絡中の気血の流れを一刻も速く回復する必要性が痛感され、それは本来の腎ガンの治療方針に矛盾せず協調できることなので積極的に進めることにしました。私が手術をしていた頃を思い出しても、手術の切開をどういう風にするかを考えるとき、皮膚の紋理に沿って切開し術後の傷がなるべく目立たないようにするといった配慮はすることもありましたが、ガンの手術などの時には手術がやりやすいように皮膚切開するだけで、中国医学で重視する経絡のことを考える医師などまずいないでしょう。しかし経絡を切断してしまえば、少なくとも当初(どのくらいの期間か全く不明ですが)その経絡の流れが断たれ、関連する臓腑などに悪影響が出ることは当然考えられます。こういった意味合いからも従来の皮膚切開による外科手術は、可及的に内視鏡などを介した方法の導入により、なるべく切開線を短かくすることを目指すか、経絡の考えを導入して切開方法を再考するといった配慮が望ましいといえます。
さてSさんには、基本的な治療方針に則り、煎じ薬、動物炭薬、軟膏の3者併用療法を行いました。初めは動物炭薬で吐き気が出たりしましたが、動物薬の種類を変えたりする事で、その後は問題なく服用できるようになり、現在は動物炭薬の座薬も併用しています。西洋医学的な諸検査も全く異常なく元気に経過しています。
症例(2) 同じ投薬で鎮痛と制ガンを同時に実現
Tさんは45歳の男性。1996年6月健康診断で血尿が指摘されましたが再検査をせず放置していたところ、11月に入ってトマトジュース様の血尿が始まり、某病院で腎臓腫瘍と診断され、某大学病院を紹介されました。1997年2月4日右腎臓摘出しましたが、腎動脈へ浸潤しており、ステージVbでした。2月17日より一年間の予定でインターフェロンの注射を毎週3回始めましたが、途中の9月より右足の第一指の痛みが始まり、次第に疼痛部位が拡大し肩、膝と全身化したため、10月15日まで合計105回打った段階で中止となりました。整形外科で診察を受けましたが、リューマチ反応は出ず、インターフェロンの副作用としても聞いたこと無いと言われているそうですが、やはり副作用だろうと思います。
姉が卵巣ガンで私のクリニック受診中のため、紹介され1998年4月7日に受診しましたが、本人の受診目的は腎臓ガンの再発の懸念より、痛みの治療にありました。冷飲食の禁止や上手な気晴らしといった基本的な注意を伝えた後、診察を行いました。上腹部が冷たく堅く圧痛があることは他の患者さんと同じでしたが、臍の上下と側腹部にも抵抗圧痛が目立ち、舌苔が舌根部に厚いことから、気滞と湿邪の滞りが明らかであり、また脈が全体に沈で細く内蔵の機能低下が著しいことも示唆されました。
何より特徴的なことは上腹部の肋骨下縁に沿うようにして山形に手術痕があり、特に右側は側腹部に至っており、中国医学の経絡理論から判断すると、肝・胆・腎・脾・胃の各経絡と任脉が完全に切断されている状態でした。このことが説明がつきにくい全身の痛みと内蔵の機能低下の大きな原因であることは十分考えられることです。事実幸いガンの再発はなく現在に至っていますし、痛みもお血を除き鎮痛効果を持つ乳香、没薬、三稜、莪朮などを使用することで、徐々に軽くなってきています。ただ肝・腎などの働きを補う生薬を多用しているにもかかわらず、肝・腎の脈状が思うように回復しませんので、使用する生薬の種類・量を考慮しつつ経過を診ています。
ちなみに痛みが何故起こるかを中国医学では、気・血・津液の流れの滞りにより起こると考えます。さらに細かく考えて、気滞が主の場合は脹った感じを伴い、お血の際は刺されるような痛み、痰飲の場合は重だるさを伴うと言われています。ここで思い出していただきたいのは、ガン自体が気・血・津液の流れの滞りが直接の病因と見なされていることです。この患者さんの場合は腎臓ガンというお血が主因であるガンであり、しかも痛みも刺痛を主とすると言うことで、ともにお血を除くことが治療目標になります。つまりお血を除くことが鎮痛と制ガンの両方の目標になり、同種類の生薬で対応できることになります。こういう点も西洋医学では考えられない中国医学の特色といえます。
またこの患者さんの場合残念ながら、炭末を服用すると悪心が強く、結局途中で動物炭薬の服用を中止とし、煎じ薬と軟膏治療で経過を診ていますが、現在再発もなく、痛みもほぼ無くなり順調に経過しています。 |
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| 腎臓ガンに対応するツボ:軟膏を塗布する場所 |
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崑崙 |
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内関
腕の手のひら側で、手首のしわの中央から上へ指3本分 |
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中渚
こぶしを握ったときに出る手の甲の薬指と小指のけんの間のへこみの中央 |
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